お気に入りの飲食店を経営者目線で探す4つのチェックポイント!
飲食店の10年後の生存率は約5%?
外食産業には、手ごろな価格と手軽に利用できるファーストフードから、入店するためのドレスコードがあって敷居が高い高級店まで多岐にわたります。自分の店を持つことを夢見て、脱サラをして店を開き、この分野に参入する人は多くいます。
しかしながら、外食産業における価格やサービスの競争は年々激化しています。そして、客が求める質やサービスも時代の流れとともに変化しています。社会情勢や自然災害などにも大きな影響を受けてしまいます。
何年かぶりに訪れた街で「あのお店がない!」「違うお店に変わってた!」何てことは誰でも経験した事があると思います。
国が調査した外食産業の廃業率に関する有名なデータがあります。飲食店の1年後の廃業率は30%、2年後の廃業率は50%、5年後の廃業率は60%、10年後の廃業率は95%。何と10年後の生存率はたったの5%と言う衝撃的なデータです。
一概には言えませんが、寿司屋よりお弁当屋、和食よりラーメン屋、フレンチよりカフェなど、厚利少売より薄利多売、高級店より庶民派のお店の方が生存率が低いようです。飲食業に限ったことではありませんが、参入しやすい業種は離脱も多くなるようです。
お客目線で言うと、お気に入りのお店が見つかったら、万が一に備えて出来るだけ楽しんでおくと良いでしょう。
チェックする資格
規模やジャンルを問わず食べ物を提供する店を始めるには、そのための必要な資格や許可が必要です。
食品衛生責任者
一つ目が、「食品衛生責任者」です。飲食店には「食品衛生責任者」の資格を持った人が1人以上在籍していなければいけません。店舗で食中毒や食品衛生法の違反が起こらないように管理して運営する資格です。
各地位の保健所に行って講習を受けてテストに合格すれば取得できるものです。1日で取得でき、費用は10,000円ほどで、テストの内容は講習をしっかり聞いていればそれほど難しい内容ではありません。
「食品衛生責任者」は17歳以上であれば誰でも取得可能ですがが、自治体によっては高校生の受講は不可としている所もあるので注意あ必要です。
また栄養士・調理師・食品衛生管理者などの資格を有し「食品衛生の知識」をお持ちの場合は、この資格がなくとも「食品衛生責任者」になれます。
防災管理者
もうひとつの資格は、「防災管理者」です。お店の収容人数が30人を超える場合は、「防災管理者」が居なくてはいけません。この30人とは客席数ではなく、従業員(社員、派遣、アルバイトなど)数も合わせた人数ですので注意が必要です。
申請時には、お店の面積によって甲類又は乙類と解れます。ただし、比較的小さなカフェやラーメン店などであれば必要ないでしょう。
講習は2日程度で受講方法や費用は目安として8千円位ですが地域ごとに異なるので、必要な場合は最寄りの消防署に問い合わせて確認すると良いでしょう。
深夜酒類提供飲食店営業届
もし、開業しようとする店舗が午前0時から日の出までの深夜も営業し、その間にアルコール飲料を提供する予定であれば、「深夜酒類提供飲食店営業届」を出さなければいけません。この届出には、店舗の図面や求積図など個人で揃えるには難易度の高いものが含まれます。よって、専門家に費用を支払って依頼する方が、結果的に時間や労力の節約になるでしょう。ちなみに、飲食店を開業するにあたって調理師免許は必要ありません。
テイクアウト・デリバリーに許可は必要?
営業許可をすでに受けている飲食店が該当店の厨房で調理して、該当店の店内で提供している料理と同じ料理をテイクアウトやデリバリーする場合には、基本的には追加手続きは必要ありません。消費期限や内容量、原材料名などの表示義務もありません。
店内で調理した料理をお弁当として店先で販売するには別途の許可申請が必要です。法律上はテイクアウト・デリバリーお弁当販売は分けています。また、店内で調理した料理を別の場所でお惣菜として販売してもらうには別途の許可申請が必要です。
さらに、お店以外の場所で製造・加工した加工品を仕入れてそのまま販売する場合、移動車や屋台など届け出た店内とは別の場所で店内で提供している料理と同じ料理を販売する際にも、別途許可申請が必要となる場合があります。この場合は消費期限や内容量、原材料名などの表示義務があります。
自治体によって条件や詳細など異なる場合もあるので、保健所に確認するのが無難でしょう。
ほとんどの飲食店では、必要な資格を入店時や会計時に見える様な場所に提示しています。お客目線で言うと、このような資格がきちんと提示されているかどうかも安心して食事が出来るかどうかのチェックポイントとなります。
飲食店におけるお金の話
経営者が毎日必ずチェックしているお金についてみていきます。
適正な原価とはどれくらい?
商売をする上で、いくら儲かっているのか具体的な数字を出すときに必要な値に「原価」があります。飲食店の場合は、提供する料理の材料費(廃棄を含む)や飲料費がこれにあたります。そして、売上金額のうち、どれくらいの割合をこの原価が占めるのかを数値化した値が原価率というわけです。
つまり、食材費÷売上が原価率です。しかしながら、飲食店で扱う生鮮食品などは季節によって値段が変わります。自然災害等で農作物が不作になると、仕入れる野菜の価格は上昇するでしょう。同じ野菜でも前年と同じ価格で今年も仕入れることができるとは限らないというわけです。
飲食店の場合、適正な原価とは25~30%程とされています。しかしながら、この数値はあくまでも目安であって形成スタイルによっては全く当てはまらない場合があります。
原価率が80%を超えるものの客の回転率を上げることによって利益を上げているファーストフード店もあれば、原価率20%ほどで店舗の高級感や付加サービスを加えて客単価を上げることによって利益を上げる高級店もあります。経営スタイル、経営状態によって原価率は変動すると考えてよいでしょう。
また「FLコスト」という、原材料費と人件費の比率で損益を考えていく、飲食業界独自のコスト概念もあります。
粗利って何?
レストランなどの飲食店の利益を計算するためのひとつの指標に粗利があります。これは、売上高から売上原価を引いたものです。経費は含まれません。
簡単計算例で例えると、ドリンクを一杯500円で販売している店があるとします。材料費である原価は120円である場合の粗利とは、500円-120円=380円となるわけです。売り上げは、500円あったけれども材料費として120円かかっているので、儲けは380円という計算です。
そして、この粗利を売上高で割った値を粗利率と呼び、売上高の中で儲かった額の割合になります。先ほどのドリンクの例で考えると粗利の380円を売り上げの500円で割ると0.76となります。つまり粗利率は76%です。売上高500円のうち76%が儲けとして残るという計算です。
常に意識する必要のある客単価とは?
飲食店を経営するにあたって、売上目標を立てます。しかしながら、競争が激化している飲食業界で生き残っていくには、売上目標をコンスタントに達成し続けるだけでは不十分です。
客単価を把握して、分析することによって売上の内訳に動きや変化が無いか知ることは、今後の経営戦略を練る上で必要なデータとなります。客単価を算出するには、その日の売り上げをその日の来店客数で割れば出すことができます。
例えば、一日の売上が20万円あったとします。客数は100人でした。この場合、客単価は2,000円です。同じ売上で客数は50人だった場合、客単価は4,000円です。
このように、同じ売上金額でも客単価が高ければ少ない客数で目標とする売上を出すことができるのです。それで、客単価とは、意識することによって客の満足度を図ったり効率よく売上目標に近づく方法を探ることができる大切な指標なのです。
営業利益=粗利-販管費
今までいくつかの項目をみてきましたが、最終的にいくら儲かっているのかを見るのが営業利益と言う事になります。販管費とは販売費および一般管理費の略語で、営業活動に要する費用のうち売上原価に該当するのもを除いた費用。お店を運営して行くための経費にあたります。
宣伝広告費、各種手数料、人件費、不動産賃料、修繕費、減価償却費、水道光熱費、交際費、福利厚生費、租税公課などが販管費に該当します。
先ほどの、ドリンクを一杯500円で販売している店の例でいうと、材料費である原価は120円である場合の粗利は500円-120円=380円となり、一日50杯、一カ月で1500杯売れたとします。一カ月の粗利は57万円となります。この57万円から一カ月の販管費、例えば25万円を引いた残りの32万円が営業利益となるわけです。
お客目線で言うと、この様なお金の視点を持つことで、お店によって料理、接客、立地、内装、利益、信念や理想等どこに比重を置いているのかバランスはとれているのか等のチェック、さらに経営状態の推測などもできるわけです。
経営者の苦悩
経営者は、自分で決めた道とは言え苦悩もつきません。食材仕入れ先、不動産オーナーからの値上げ請求、クレーマー対応、身内の口出し、ライバル店の出現、度重なる接待、自分ではどうにもならない社会情勢の変化、応急的な資金調達、法律の改正、主要メンバーの離脱、想定外の言動をとる正社員、採用後にわかった働きが悪いけど口は達者なアルバイトなど。
経営者は自身の経験値や先輩経営者、異業種の人のアドバイスも取り入れて、試行錯誤しながら短期・中期・長期戦略を立ていきます。あらゆる想定をして、リスク管理もとりながらアイデアを振り絞って毎日お店のことばかりを考えているのです。
お客目線ではありますが、そんな経営者の苦悩を考えると目の前にある料理が今までとは違って見えてくるものです。
まとめ
- お店はあるうちに楽しむ
- 必要な資格をチェック
- お金の動きをチェック
- 経営者ならではの苦悩も考えてみる
経営者に限らず調理スタッフ、接客スタッフ、営業・経理担当者などの事も考えると、感じの良い接客、おいしい料理や素敵な空間を提供してくれる飲食店には、苦しい状況の時でも負けずに頑張って頂きたい、応援したいと思うもの人情かもしれません。
是非お気に入りのお店を見つけて外食ならではの楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか。
今回は「経営者目線でみる飲食店」についてのお話しでした。